2010年10月29日金曜日

モーツァルト オペラ「後宮からの逃走」





衣無縫な創造のインスピレーション

 不世出の天才作曲家モーツァルトがその真価を最大限に発揮したのはまぎれもなくオペラでしょう。モーツァルトは襟を正した交響曲や宗教音楽でももちろん美しく格調高い作品を作ったのですが、やはりオペラの生き生きした魅力には及びません。オペラはモーツァルトの天衣無縫な創造のインスピレーションを縦横無尽に発揮できた格好のジャンルだったのです。

 おそらく、過去現在においてオペラのジャンルでモーツァルトほどの至高の高みに達した作曲家はいないと言ってもいいでしょう。いわゆるモーツァルトの3大オペラと呼ばれる「フィガロの結婚」、「魔笛」、「ドン・ジョバンニ」はどれも汲めども尽きない最高のエンターテインメントであり芸術なのです。
 生き生きとした人間感情の表現、神秘の世界に誘う感性やコミカル、シリアスな表現の陰に見え隠れする哲学的なメッセージ……。そしてそれは決して理想の人物像を描くのではなく、等身大の人物を飾ることなく、デフォルメも加えながら大胆に描いて見せるのです。まさにオペラの世界においてモーツァルトは自ら道化となりながら、やんわりと人生の本質を皮肉を込めながら描いていったのです。

 そのモーツァルトのオペラの中でも「後宮からの逃走」は最も入りやすい作品かもしれません。この作品はストーリーがやや唐突なところがありますが、変化に富み、ヴァイタリティに溢れ、随所にモーツァルトの卓抜したセンスが散りばめられているのです。
 舞台はトルコの太守に売られてしまったコンスタンツェ他2人(ペドリッロ、ブロンデ)を救出するためにベルモンテが宮廷に潜入します。しかし廷内では性悪な番人オスミンが見張っているため救出はうまくいきそうにありません。
 そこでペドリッロはオスミンを誘って酒を飲ませ、眠らせようとします(アリア「さあ戦いだ」、二重唱「バッカス万歳!」)。この作戦は成功します。しかし、上手くいったと思ったのもつかの間、オスミンが目を覚ましてしまい、再び捕らえられてしまいます。


 ベルモンテがコンスタンツェと再会する時の四重唱「喜びの涙が流れるとき」から、ベルモンテとペドリッロがコンスタンツェとブロンデの貞節を疑うものの、誤解が解けて和解する四重唱「ああベルモンテ、私の命」のあたりはこの作品の最大の聴きものです。
 喜び、失望、慰め、希望といった様々な感情が次々に表情を変えながらもまったく音楽的な窮屈さを伴わず、一気に聴かせてしまうモーツァルトの天才的なセンスには唖然とするしかありません。この作品では主役のコンスタンツェ、ベルモンテ以上にオスミン役の比重が大きく、何よりも図々しいくらいの存在感と声の独特の魅力が要求されるでしょう。


 CDではクリスティ(エラート)の演奏が一切気負わない自然体のしなやかな演奏を聴かせてくれます。しかもまったく薄味になることなく、自然体であることが歌の魅力を引き立てて、楽器の響きを際立たせ、透明感に満ちたディテールの魅力を掘り起こして行く結果となるのです。シェファーのコンスタンツェ、ポストリッジのベルモンテ等、充実した歌手陣も魅力です。ただ、オスミン役のアラン・ユーイングが少々弱い感じがするのが残念です。


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2010年10月27日水曜日

横浜美術館「ドガ展」




 先日、横浜美術館のドガ展を見てまいりました。展示された作品は国内外のコレクションから油彩、パステル、デッサン、彫刻等120点に及ぶ結構な数でした。展示の順路が年代と作品の傾向の変遷に沿っていたので、ドガの人となりや創作上での紆余曲折を垣間見れたような気がします。
 改めて思ったのは、ドガは人物を被写体にすると、直感的に本能的に何の迷いもなく線やタッチを強い存在感をもって描くことができた稀有な才能の持ち主だったということです。バレエの踊り子の習作や油彩、乗馬の絵も見事ですが、特に見事なのは裸婦のデッサンですね。後ろ向きの裸婦は人体の質感はもちろん、力感や空間を感じさせつつ壮大な小宇宙をも表出しています。これまでドガは卓抜なデッサンの名手とだけ思っていたので、この柔らかく深い世界は正直、驚きでした。

 また、ドガにとっては珍しい風景画も展示してありましたが、秀逸な人物画を見慣れているせいか、登場人物が出てこない舞台のようでちょっと違和感が残りました!?
 挿し絵やパンフレットのメインビジュアルもあったりして、これは何と贅沢なんでしょう!これほど説得力があり完成度の高い挿し絵があれば、仮に内容が稚拙であっても絵の魅力でそれを補って余りあるのではないかと思ってしまいます。
 この展覧会はかなり人気があるらしく、私が行ったのは平日の午後でしたが意外と来場された方でいっぱいでした。土日はかなりの混雑になるのではと思います。


時間がとれる方であれば平日のほうをおすすめしたいと思います。
【ドガ展・展覧会概要】
◯横浜美術館
 〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1 
 TEL045-221-0300
◯2010年9月18日(土)〜12月31日(金)
◯10:00〜18:00
(毎週金曜日は20:00まで開館。入館は閉館の30分前まで)
◯休館:毎週木曜日
(ただし12/23、12/30は閉館)
◯チケット
(一般1500円、高校・大学生1200円、中学生600円、中学生以下無料)

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2010年10月25日月曜日

デューラー版画・素描展



版画に聖域を築き上げた巨匠の展覧会

アルブレヒト・デューラー 《ネメシス(運命)》1502年
エングレーヴィング 国立西洋美術館

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アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然
会期:20101026日(火)~2011116日(日)
東京・上野国立西洋美術館
開館時間:午前930分~午後530
毎週金曜日:午前930分~午後8
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(*ただし、201113日・10日は開館、
1228日(火)~201111日(土)、14日(火)・11日(火)は休館)
2011年は12日(日)から開館します。
国立西洋美術館公式HP http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html
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 ドイツの画家アルブレヒト・デューラー(1471-1528)は、芸術において「宗教・肖像・自然」という主題が重要だと考えました。この3つの主題でデューラーの版画を見る本展は、メルボルン国立ヴィクトリア美術館のコレクションの105点を中心に構成されています。(国立西洋美術館HPより)
 デューラーは版画に一つの聖域を築き上げたともいえる巨匠です。今回の展覧会は創作活動の中核をなす版画と素描のみのもので、デューラーのデッサンにかける確固たる想いが伝わってきそうです

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2010年10月24日日曜日

ニュープリント版「死刑台のエレベーター」


鮮明な画質で甦ったルイ・マルの名作








 以前このブログでもご紹介いたしましたニュープリント版「死刑台のエレベーター」ですが、10月9日から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開中です。今後、このニュープリント版は全国主要都市で順次公開予定とのことです。
 予告編でもお分かりのように、画質が見事に蘇っていることにきっと驚かれることでしょう。作品は息もつかせぬ展開の連続で、時間があっという間に経ってしまったと思われるに違いありません。いずれにしても年齢、性別関係なく誰が見てもその完成度の高さに目を見張る名作だと思います。この機会にご覧になるのもいいかもしれませんね!!
公式HP http://www.zaziefilms.com/shikeidai/


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