2012年9月23日日曜日

ヘンデル 合奏協奏曲集作品6-1(1番-4番)







合奏協奏曲作品6 第1番~第4番(HWV.319-HWV.322)




【合奏協奏曲 第1番 ト長調 HWV.319】
 合奏協奏曲作品6を象徴するような作品で、堅苦しさのない爽やかな曲調が印象的です。バッハのブランデンブルク協奏曲第1番の開始と比べると、そのあまりの違いに驚かれるかもしれません。空気のように軽やかで、エネルギーにあふれ自由で多彩なヘンデルの音楽! この1番でも春の到来を想わせるような希望に満ちた弦楽器のパッセージがとても新鮮です。

 第1楽章は短いけれどもはっとするような懐かしさとデリカシーがあります。聴き進むうちに何かが始まるような予感と爽やかな抒情に次第に心が引きつけられのではないでしょうか。
 第2楽章ではさらに広々とした希望の出発のようなテーマが繰り広げられます。第3楽章のアダージョは心の内面を見つめるようなヴァイオリンの音色が印象的。第4楽章のアレグロはこの作品の核心の部分で、自由なフーガによる決然とした曲調が希望や喜び、憧れの想いを更に膨らませていきます。それを受けるフィナーレのジーグも晴朗で快活なメロディが曲を大いに盛り上げていきます!


Orpheus Chamber Orchestra



 (演奏) オルフェウス室内管弦楽団の演奏は指揮者を置かず、各奏者の自発的な感性によって生み出されたものです。この1番はそのような個々のオリジナリティがプラスに出た結果と言えるでしょう。弦楽器の透明感を漂わせた美しさ。モダン楽器なのに野暮ったくならない卓越した音楽性等、本当に素晴らしいです。特に第3楽章アダージョの中間部でソロの弦楽器が歌い交わす美しさは恍惚としたひとときを約束してくれます。

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【合奏協奏曲 第2番 ヘ長調 HWV.320】
 第2番は自然への感謝がテーマになっているとよく言われます。たとえば、第1楽章のみずみずしい楽曲は爽やかな風、穏やかな光を想わせ清々しい余韻を残します。第2楽章のアレグロもシンプルな曲の構成と可愛いらしい主題の進行に胸が高鳴っていきます。
 そして短いけれども曲の核心と言えるのが第3楽章のラルゴ!
 何度も立ち止まり、自然のささやきを聴き入るようなソロヴァイオリンとオーケストラのやりとり! 中間部からは雨上がりの草木が光を浴びて輝きを放つような情感が続きます。ここは何回聴いても素晴らしいですね! まるで自分が瞑想し自然と語りあっているような錯覚に捉われたりもします。
 このチャーミングなラルゴのあと、フィナーレのフーガヘと続きます。このフーガは自然賛歌を締めくくるにふさわしい、宇宙的な意思に貫かれた名旋律と言えるのではないでしょうか。

B. Neel String Orchestra


(演奏)2番はボイド・ニール指揮ニール弦楽合奏団の演奏(1950年盤)が最高です。 ニールはこの作品をとても大切にしているようで1938年盤の演奏も素晴らしい出来ばえでした。情感豊かな演奏で繊細な表情を見事に捉えています。特にラルゴの魅力は筆舌に尽くし難く、ちょっとした気分の変化に敏感に反応し入魂の名演奏を成し遂げています。

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【合奏協奏曲 第3番 ホ短調 HWV.321】
  深い森を想わせる幽玄な響きが印象的です。
 第1楽章序奏で憂いを帯びたもの悲しい弦の調べが回想のシーンのように映し出され、曲の全体的なイメージを彷彿とさせます。
しかし、この曲で最も印象的なのは第3楽章ポロネーズでしょう。 舞踊風の独特のリズムとテーマはそれまでの鬱積した気分を一掃させるような愉しさと生命のエネルギーに満ちているのです。最高に上機嫌で屈託のない笑い声が聴こえてきそうな音楽が何とも心地いいです!

August Wenzinger(Board Highlights LP)


(演奏) LP時代の最高の名盤、アウグスト・ヴェンツィンガー指揮バーゼルスコラカントルーム管弦楽団の名演奏が未だにCD化されてないのは本当に不思議です。CDが発売されることを首を長くして待っているのですが、現在の状況では今後も期待できそうにありません。このままこの録音が時間の流れと共に忘れ去られなければいいのですが……。演奏はどこまでも優雅で滋味あふれる響きがとても心地よく、3番の本質を堪能できます。
 とりあえずCDジャケットはないものの、LPのハイライト盤の画像のみ掲載させていただきます。

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【合奏協奏曲 第4番 ホ短調 HWV.322】
この作品は合奏協奏曲の中で最も芸術的な香り高い作品ではないでしょうか! とにかく各曲が有機的な関係を保ち、ギリシャ彫刻のように高い次元で結晶化されています!つまり、 全4曲がめくるめく感動と驚きの中であっという間に終ってしまうような感じがするのです……。
 第1楽章の美しく澄み切った旋律は崇高な哀しみがひたひたと伝わってきます! さらに第2楽章では目の覚めるような厳しいフーガがとめどなく打ち寄せる波のように展開され、聴く者の心を圧倒します。
 そのような厳しい2つの楽章を受けるのが優美な第3楽章のラルゴです!特別な主題は持ちませんが、天上から降りそそがれる光のヴェールのように、優しく深い充足感を与えてくれることでしょう!第4楽章も誇張された表情はありませんが、その強靭な足どりと安定した曲調は最高です。

August Wenzinger(Board Highlights LP)

Orpheus Chamber Orchestra



(演奏)ヴェンツインガー指揮バーゼルスコラカントルーム管弦楽団はテンポの設定や間の取り方が絶妙で、ストレートにこの作品の美しさや本質を実感できます。特別なことは何もしていないはずなのに音楽から風格や透明な詩情が漂ってくるのです。

 オルフェウス室内管弦楽団の演奏はヴェンツインガー盤に比べるとやや線が細い感じがしないでもありませんが、磨き抜かれたアンサンブルの精緻さが最高に発揮されています。第1楽章の祈りに満ちた表情、第2楽章の雄弁で直線的なフーガは素晴らしく、第3楽章ラルゴの透明感漂う夢のような情緒も素晴らしいです!








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